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2015年暮れのご挨拶

年末のご挨拶も飛び交っております。師走です。

今年最後の記事は、僭越ではございますが、ひらしゃしんが今年読んだ文芸書のなかでおすすめの本をすっと差し出しまして、締めたいと思います。

余談ですが、加藤製本は得意先に文芸書を扱っている出版社様が多く、製本の種類でいいますと上製本(ハードカバー)を得意としています。巷では持ち運ぶのに重いとか、大きいとか言われてしまいがちですが、よくよく手に持ってみると、実はそんなにでもないような気がします。製紙会社さんの日々の努力により、最近の書籍用紙は嵩高(要は軽い)な紙がたくさん出ているし、芯材(表紙の固い部分)は薄いものもよく使われるようになりました。今一度、本屋さんでハードカバーの本を持ち、目を瞑ってみてください。

「ほら、そんなに重くない(開眼!)」。

二冊、ご紹介いたします。

一冊目は今年の新刊で、第153回直木三十五賞候補でも話題になりました、西川美和氏の「永い言い訳」(文藝春秋刊)。読む前から好きでした。なぜなら葛西薫・増田豊両氏による装丁がほんとうに美しかったので。書名が著者直筆なのも格好いい。グレー、白、青の配色と紙の質感。わたくしはカバー帯を外して読む派なのですが、この本に関してはそのまま。毎日本を開く行為自体が楽しみになる程でした。ジャケ買い推奨。そして内容もそれ以上に楽しめると思います。来年秋に自身監督作品として映画の公開が予定されていますが、そちらも今から楽しみです。いわゆるダメ男の話なのですが、コピーにもあるように「愛するべき日々に愛することを怠ったことの、代償は小さくない」。主人公と一緒に反省してまいりましょう!

永い言い訳
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163902142

二冊目は松家仁之氏「火山のふもとで」(新潮社刊)。初版は2012年ですが、手に取るきっかけとなったのは昨年創刊した「つるとはな」という雑誌。編集長が松家氏だったからです(多才!)。内容は建築を勉強した青年が尊敬する建築家の個人事務所で修業をする日々のこと。非常にシンプルなのですが、物語のなかに散りばめられた、創作への思想、描写に出合うたびに背筋の伸びる思いでした(ちょこちょこ差し込まれる食べ物と料理の場面も素敵)。皆が作業に使う鉛筆をナイフで削る場面があるのですが、その音を「さり さり さり」と表現します。わたくしも職場でよく鉛筆を削るのですが、この本を読んで以降、イメージは完全に「さり さり さり」。なんだか製本もうまくなるような気がする! そんな風にモノ作りすら支える、贅沢な一冊でした。

火山のふもとで
http://www.shinchosha.co.jp/book/332811/

弊社は12月29日から1月4日まで冬季休暇をいただきます。
何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。

本年中のご愛顧に心より御礼申し上げますとともに、
来年も変わらぬお引き立てのほどよろしくお願い申し上げます。

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日本文学全集イベントにいってきました!

弊社が製本を担当させていただいております、河出書房新社様の「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」。全三十巻刊行予定中十二巻が出揃ったところで、第Ⅰ期完結記念イベントが新宿サザンシアターで行われました。
https://www.kinokuniya.co.jp/c/label/20151105113000.html

トーク登壇者は池澤夏樹先生をはじめ、第Ⅰ期最後に刊行された「好色一代男/雨月物語/通言総籬/春色梅児誉美」
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309728810/
訳者の島田雅彦、円城塔、いとうせいこう、島本理生 各氏。

イベント冒頭、それぞれの現代訳を朗読する様は四人四様、たいへん個性的で、作家さんを通じて今後の読書がより楽しめるような気がしました。

朗読しているその手元にはもちろん、カバーの水色がまぶしい日本文学全集。おばかな感想ですが、自分たちの製本したものが作家さんの手に持たれている様子というのは、思いのほか感動するものですね。開きはどうか、めくりにくくないか、なんだかハラハラしてしまいましたが、皆様流れるようにページをめくってくださってなんだか一安心です(あたりまえ)。

その後、池澤先生を交えたトークも朗らかで、時折苦労話や裏話など。唸りながらも楽しく拝聴。

休憩中には、故・野坂昭如氏の歌う「マリリン モンロー ノーリターン」が流れていました。

いろいろあった一日でした。

年明けすぐに始まる第Ⅱ期も楽しみです。製本作業もがんばります。