投稿日時:

本棚を見ると? 2

さて、この妖怪メダル、ホログラム箔が押してあるものをレアメダルなどというそうで、子供たちがこぞって欲しがるとのことです。レジェンドといわれるレア中のレアメダルともなると、100人中100人の子供が、爺さまが普段、大事そうに磨きをかけている人間国宝の壺ですらあっさりと交換することをためらわない?ほどのもののようです。

先日、とある箔のメーカーさんが来て、オンデマンドの箔押し機というものを紹介してくれました。版が要らずにバリアブルに箔押しができるという、なかなかびっくりのすごいもの
です。しかしながら、その箔押し機をどこにどのように提案して売り込めば良いのか、という悩みがあるそうです。

箔メーカーさんには、妖怪メダルにホログラム箔を使うと大人気になるなどということは想像すらつきません。ましてやバリアブルともなると、個々の異なるニーズに応えることとなるので、もはや1社のメーカーの手におえるものではありません。答えを知っているのは市場だけでしょう。

話を本棚に戻しましょう。私の本棚には何もコロコロばかりがコロコロしているわけではありません(苦笑)。他にも世界で初めてつくったPURの無線上製本(丸背)とか、丸背のフランス装などというものもあります。

これらの本は、この先おそらく、造本史に記されることもなければ、神保町の古書店や研究者の方々から評価を受けることもないものでしょう。

でも、私にとっては保存しておかずにはいられない、どれもかけがえのない本ばかりです。それらは、私たちが開発に成功した、日本が世界に誇れる製本技術の証であり、私にとっては何よりも、共に働く仲間たちとともに苦労してつくりあげた “レジェンドメダル” ならぬ “レジェンドブック” の数々。時にそれらをじっと眺め、「製本人ってまんざらでもない」って思ったりもします。

(終)

加藤隆之

バックナンバー:本棚を見ると? 1

投稿日時:

本棚を見ると? 1

本棚を見ればその人のことが良くわかるといいます。

もし、本棚探偵などという人がいたとすれば、「この専門書の数々から推察するに、あなたの職業は○○で、勤務先の場所はこの書店カバーから察するに××ですね。すると会社が絞り込めます。あなたが犯行時刻に会社にいなかったことは明らかです」などというのかもしれません。

そんな探偵が私の本棚を覗いたとしたら、極めて不可解なケースに思うことでしょう。私の本棚の中身は一般的なものとはかなり異なるか
らです。

10代の女性向けの小説もあれば、コロコロコミックなんて小学生が読むマンガもたまに入っていたりもします。きっと本棚探偵さんから、「むむっ、これは私の領域ではありません。まずは専門医にご相談を。お気を確かに~」とかいわれそうです。

つまるところ、私の本棚には、製本屋という職業のおかげで、内容とは無関係に本が収納されています。コロコロコミックのような雑誌にはシールやらハガキやら折図やらいろんなものが綴じられていて、これって工夫しているなあー、なんて感心させられることがよくあります。〝製本探偵”という職業はありませんが、まあそんなものです。

ですから、コロコロコミックの表紙に「特典、限定妖怪メダル付き」なんて書いてあると、「おおっ!メダルだって、マジか?? どうやって入れてあるのかな?」なんて妙なテンションで食いついたりするわけです。(続く)

加藤隆之

投稿日時:

第153回 芥川賞・直木賞の贈呈式のリアルな風景3

今回は懇親パーティーで振る舞われる料理について書きます。

この賞にまつわる特別なメニーはありません。パーティー料理です。ただし、ここ帝国ホテル。吉兆、なだ万などの名店がその場で調理して提供してくれます。

一番人気はなんといっても鮨です。これは東京會舘の時もそうでした(ちなみに東京會舘の名物はカレーライスです)。職人さんたちも大忙し。うまく説明できませんが、私の舌が記憶している一流の職人さんが握る味がしっかりと確認できました。続いて食したのは、その場で揚げる天ぷら。揚げたてを焦ってすぐに食べてはいけません。そんなことをすると、熱くて味もわからぬままハフハフしてしまい、「あいつ、やっちまったな」と思われてしまいます。ましてやここは格調高き帝国ホテル、ハフハフ君に成り下がった姿をそう簡単にさらすわけにもいきません。

さて、この天ぷら、衣を大きくして立派に見せるような天ぷらとはちがいます。素材のうまみを閉じ込める程度の薄い衣です。塩でいただきました。この塩が・・・ズバリ芥川賞ものです。塩がこの世で主役になれるのは、歯茎を引き締める時ぐらいだろうと思っていた自分が愚かでした。この塩があればたいていの人は料理名人になれそうな? ほどです。

この他に頂いたのはフカヒレ入り中華そば、北京ダック、熊本産黒毛和牛のホホ肉を黒酢で味付けしたもの。個人的にはこの黒毛和牛が3つ星です。酢といえば豚とばかり思っていましたが、私のなかにこの日、 酢豚<酢牛 という新たな法則が加わりました。腕に自信のある方はトライしてみてください。

最後の〆は讃岐うどんで。囲み取材を受けている又吉さん、胴上げされている羽田さんを見ながらという、不思議な讃岐うどんをいただく贈呈式ならではの光景でした。

(終)

加藤 隆之

バックナンバー:芥川賞・直木賞の贈呈式のリアルな風景1
バックナンバー:芥川賞・直木賞の贈呈式のリアルな風景2

投稿日時:

第153回 芥川賞・直木賞の贈呈式のリアルな風景2

贈呈式の始まりです。まずは賞の贈呈。続いて選考委員からの祝辞。選考で満票が入った直木賞の「流」はこれまでの受賞作のなかでも図抜けて評判が良いようです。

さて、いよいよメインの受賞者のスピーチです。何度も報道されているので内容にはふれませんが、壇上の受賞者の写真を撮ろうとカメラを構えたところ、あまりのライトの強烈さで顔が真っ白に。カメラ性能の良いスマホですが、報道陣のライト攻勢の前に撃沈…。

又吉さんのスピーチにお笑いは一切なし。作家・又吉直樹の印象をより強くしたように思えました。何よりも配布された小冊子に書かれていた文章が秀逸で(ここでは著作権上、公開できませんが)、感心しました。贈呈式の締めは日本文学振興会の松井清人・理事長の挨拶。この後、同じ会場での懇親パーティーに移行します。

改めてよく見ると、有名作家の方があちらこちらに。津本陽さん、宮部みゆきさん、村山由佳さん…、いつも大変お世話になっている大沢在昌さんがいらしたのでご挨拶。やはり、印象に残ったのはカラフルでキラキラ感がアップしていた志茂田景樹さん。孔雀の間のゴージャスな照明が引き立てます。いやーすごいです…。(続く)

P.S. AGFでは又吉直樹さんのサイン入り「火花」や「深い珈琲エッセイ」9作品が付いたBOOKボトルのプレゼントキャンペーンをやっています(31日まで)ご興味のある方は以下のサイトにて応募できます。http://blendy.agf.jp/bookbottle-cp/?_ga=1.110540741.1952855192.1414455883

加藤 隆之

バックナンバー:芥川賞・直木賞の贈呈式のリアルな風景1

投稿日時:

第153回 芥川賞・直木賞の贈呈式のリアルな風景1

「火花」が話題を呼んだ第153回の芥川賞・直木賞の贈呈式が21日に行われました。

この贈呈式は長い間、東京會舘で行われてきたのですが、現在は建て替え中ということで、帝国ホテルで行われています。又吉直樹さんのような話題性のある人物が受賞した時には、会場からあふれんばかりの来場者ということも過去にはありました。ただし、今回行われたのは、なんといっても国内でも屈指の収容人数を誇る帝国ホテルの孔雀の間です。小規模な運動会ならできそうな広さです。そう簡単にいっぱいになりません。

孔雀の間といえば、かのフランク・ロイド・ライトが設計した旧本館の流れを汲むデザインが施された由緒正しき間であります。テラコッタの美しい装飾、重みがちがいます。さすがに運動会向きではないでしょう。

さて、贈呈式ですが、出席するのは主催者と受賞者はもちろんのこと。受賞者の家族や友人、歴代の受賞者、出版界の方々、文藝春秋の取引会社の方々などで、招待状を送られた方々です。

受付で招待状を渡し、記帳するとシールをいただけるので、それを見えるところに貼ると入場できます。会場入り口付近と舞台周辺は比較的混みますが、それ以外は比較的余裕があるので、この式に30回以上出席させていただいている私は、本能的に人口密度の低い端の方へと避難します。それにしても今回はなんという報道カメラの数でしょう。

入口で渡されたドリンクを片手にしばし歓談していると、何やら奥の方の扉が開き、東山彰良さん、羽田圭介さん、又吉直樹さんたち受賞者の入場する姿が見えました。他の受賞者と比べて又吉さんは小柄で目立ちにくいのですが、あの独特なヘアースタイルのおかげで私のいた、やや遠くからでもすぐにわかりました。(続く)

加藤 隆之

受付すると頂けるシール
受付すると頂けるシール

受賞者のコメントが掲載された小冊子
受賞者のコメントが掲載された小冊子